事業再構築補助金 新事業をする上で知っておきたい3つのこと

今年一番話題の補助金である、事業再構築補助金。

公募要領が出ました。

https://jigyou-saikouchiku.jp/

当初は「今年度版の持続化給付金」のようなニュアンスも国から発表されていましたが、最終的には「元々、力がある企業が新事業を行うのに有効な補助金。小規模事業者には活用が難しいのではないか」という印象を持つ補助金となりました。

このような結論に至った背景を説明できるよう「新事業をする上で知っておきたい3つのこと」について解説いたします。

知っておきたい①:事業拡大戦略の類型と、事業再構築補助金

「ビジネスを拡大する」と決めた時に、何から考えたらいいでしょうか?

そんな時に「アンゾフの成長マトリクス」という有名な経営学者が考えたフレームワークで考えることが有効です。

「製品」と「市場」について「既存」と「新規」で分類し、4つの区分に分け、事業拡大戦略を検討する考え方です。

マトリクスで整理すると、事業拡大戦略は4つに分類されます。

市場浸透(既存市場×既存製品)

現状で製品を購入してくれるお客さんに、既存製品を上手に売る、という手法です。

一番リスクが低く、検討がしやすい戦略

よく行うのは、売上を「購入数量」「客単価」「リピート率」に分解し、それぞれを向上させる施策を考えます。

例えば「購入数量」をあげるため、HPを作る。「客単価」をあげるため値上げをする。「リピート率」を上げるため、定期購買商品を作る、というイメージです。

新商品開発(既存市場×新規製品)

現状で製品を購入してくれているお客さんに、新商品を売る、という手法です。

例えば、付加価値をつけた高額商品を売る。今売っている製品に毎月定額の保守サービスを新たに設定する。関連商品を一緒に売る、というイメージです。

新市場開発(新規市場×既存製品)

今まで買ってくれなかった顧客層に、既存の製品を売る、という手法です。

例えば、石川だけで受注していた仕事を全国受注に。女性向けに展開していた製品を男性にも。一般顧客向けサービスを、企業顧客にも、というイメージです。

多角化(新規市場×新規製品)

最後が多角化戦略。

今まで自社製品を購入したことがない顧客層に、自社としても売ったことのない製品を売る、という手法で、最もリスクが高い戦略です。

そして基本的には、一部例外の類型を除き、事業再構築補助金が求めている内容は多角化です。

補助金をもらうためには、リスクが高いビジネス展開をする必要がある。

そのため、補助金があってもなくても多角化をする予定でしたら、ぜひ補助金を申請いただきたいのですが、補助金がなければ多角化しないようでしたら、リスクの観点から多角化はオススメしません。

知っておきたい②:事業再構築補助金と持続化給付金の共通点・相違点

事業再構築補助金と持続化給付金の共通点はなんと言っても「国からお金がもらえる」という点です。

一方で、相違点。こちらをしっかり意識することが重要と考えております。

持続化給付金は「法人なら200万円もらうだけで、支出は何も求められず、その後のビジネスへの制約がない」という内容でした。

よって、200万円が利益になって、それで完結。

一方で、事業再構築補助金は「2000万円もらおうと思ったら、3000万円投資する必要がある。また、その後、補助金対象のビジネスを続けないと補助金を返還する必要がある」という内容です。

そのため、①投資額②補助金額③その後の利益、の3点を最低限考えて、実施の有無を検討する必要があります。例えば

①投資額:3000万
②補助金額:2000万
③その後の税引後利益:2年目以降、毎年100万

の場合、投資の判断はどうなるでしょうか?単純化して以下の図で考えて

6年終わった時点では、2000万+100万×5年-3000万=△500万。

あと5年続ければようやく投資回収できますが、多角化戦略をとる場合はかなりの労力を経営者が費やすので、正直どうかと思うビジネス展開になります。

ましてや、多角化という未知の領域へのビジネス展開である以上、5年程度では実際には赤字が続くことも想定して、資金繰りは考えた方がいいかもしれません。

投資効果を必ず事前に考えましょう。

知っておきたい③:補助対象とならない事例

実際に、どんな事業が補助対象か、逆にどんな事業が補助対象でないか気になるところかと。

ここでは「補助対象とならない」と国が出している事例をいくつか例示します。

自身が考えているビジネスが以下事例に当てはまらないかご確認ください。

<製造業>

・既存製品と性能差がない製品を新たに製造するため設備を導入する場合
・部品製造会社が、単に既存部品の製造量を増やす場合
・部品製造会社が、新たに製造が容易なロボット用部品を製造する場合
・部品製造会社が、新たに既存部品に単純な改変を加えてロボット用部品を製造する場合。
・工場無人化のためデジタル技術を導入する計画を立てたが、従来と比べて生産性の向上が何ら見込まれない場合

<非製造業>

・アイスクリーム屋が新たにかき氷を販売。販売先が既存顧客層の場合。
・小売店を3店舗経営する企業が、新たに同様の販売店を開店する場合。
・小売業で、既に別々に行っているネット販売事業と店舗において行っていたサブスク事業を組み合わせ、ネットサブスク事業とする場合。

まとめ

事業再構築補助金と関係する部分で、新事業をする上で知っておきたいことを記載しましたが、いかがでしたでしょうか?

実は「どんなケースなら補助対象となって、どんなケースなら補助対象とならないか」が書かれている、「事業再構築指針の手引き」という書類について、3月中旬に公表されたのですが3月29日にシレっと内容が変わっております。

変更内容として

・製品等の新規性要件について、事業計画において記載する事項から「競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと」を削除。

・製造方法等の新規性要件について、事業計画において記載する事項から「競合他社の多くが既に製品等を製造等するのに用いている製造方法等ではないこと」を削除。

など、申請の間口を広げる改訂がなされていました。

当初、上記の文言が入っている状態だと「競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないことを満たすのは困難だろう」と感じる状態。

そうすると、申請件数も当然減ってきます。

国としても、どの程度の条件であれば適正な間口となり申請件数になるか、探り探りやっているのかな、という印象です。

よって、今後も要件など変わることも想定されます。

 

「補助金をもらうこと=目的」で「多角化すること=手段」だと本末転倒で、本業すら脅かしかねないので、オススメしません。

しかし、しっかり経営者として練ったプランを作れるようでしたら、せっかくなら補助金をもらって事業を進めた方がよいです。

石川県など北陸3県の事業者で、申請サポートを希望の方は弊社までお問い合わせください。

 

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この記事を書いた人

野村 篤史税理士法人のむら会計 代表(公認会計士・税理士)
金沢で50年続いている会計事務所、税理士法人のむら会計を運営。
ITの知識・金融機関監査の経験を生かし
普通の税理士事務所+αのサービスを提供。

【著書・掲載実績】
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