掛け捨て?貯蓄?税理士視点の生命保険の有利な掛け方
生命保険でよく議論になる「掛け捨て型」「貯蓄型」の有利不利ですが
税理士の視点から検証します。
「掛け捨て型」が有利といわれるわけ
まず「掛け捨て」が有利といわれるのはなぜでしょうか?
その根拠としては
「貯蓄型がある生命保険の利率が非常に安い、
それなら掛け捨ての保険に入って保険料を安く抑える方がいい」
というのがよくある主張です。
たしかに、貯蓄型の利率は安く設定されており
保険本来の機能は「いざという時に備える」というものですので
低い利率の貯蓄型はメリットが少ないように思えます。
しかし、税金を考慮すると話が変わってきます。
生命保険料控除を考慮した本当の利率
「生命保険料控除」という言葉を聞いたことがある方も多いかと思います。
個人の税金はざっくり言うと
収入から経費を差し引いた利益から、所得控除をさらに差し引いたものに対してかかります。
生命保険料控除は所得控除の一部ですので、節税効果があるわけです。
以下の表は所得税の節税効果がどれくらいあるか書かれている表です。
一番下のみ注目していただくと
「保険が8万円を越えると、4万円だけ税金が課される金額が減る」
ということを意味します。
これと似たような表が住民税にもあり、住民税では
「保険が8万円を越えると、2万8千円だけ税金が課される金額が減る」
というきまりがあります。
「掛け捨て型」の場合はよっぽど多額の保険をかけていない場合8万円に届きません。
節税効果を最大限使おうと思うと必然的に「貯蓄型」になるわけです。
より具体的に税金の払いがどれだけ減るかでイメージしていただくと
所得税の税率が10%程度はかかる方が多いので
その方は「8万円の払いで所得税、住民税を合わせて、6,800円税金の払いが少なくなる」
ということを意味します。
8万円を投資して、6,800円もリターンがある利率8.5%の商品がどれだけあるでしょうか?
仮にあったとしても、相当リスクが高い商品です。
その点、「貯蓄型」の保険は
リスクが低い硬い商品という特徴があります。
まとめ
- 「貯蓄型」の利率は安いが、節税効果を考えると高利率
- 「掛け捨て型」では8万円まで届かないため、節税効果を最大限使えない。
なお、生命保険料控除は保険料が8万円を越えると上限を迎えるため
8万円ピッタリの掛け金が一番よい利回りとなります。
「掛け捨て型」と利率面で損得を検討する場合は
なるべく年間8万円に近い保険料の商品を選ぶのがよいでしょう。
この記事を書いた人
- 税理士法人のむら会計 代表(公認会計士・税理士)
-
金沢で50年続いている会計事務所、税理士法人のむら会計を運営。
ITの知識・金融機関監査の経験を生かし
普通の税理士事務所+αのサービスを提供。
【著書・掲載実績】
図解でざっくり会計シリーズ2 退職給付会計の仕組み(中央経済社)
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