ふるさと納税するなら、10月の制度改定前に!

石川県金沢市にある税理士法人のむら会計、公認会計士・税理士の野村です。

節税の知識は事業をする上で大事な知識です。今回は節税の観点から多くの皆様が関心を持ち、実施されていることの多い「ふるさと納税」について、改めて基本的な仕組みから、10月からなされる制度改定の内容、そして今、皆様がすべきことを解説いたします。

ふるさと納税の基本的な仕組みをおさらい

ふるさと納税は、2008年に「故郷を応援したい」という納税者の思いを形にするために始まりました。本来、住民税は居住地の自治体に納められますが、この制度を利用すれば、応援したい任意の自治体に寄付という形で税金の一部を納めることができます。

その最大の魅力は、寄付額から実質自己負担額2,000円を除いた大部分が、翌年度の住民税などから控除される点にあります。つまり、実質2,000円の負担で、寄付先の自治体から魅力的な返礼品を受け取ることができる画期的な制度なのです。
ふるさと納税
返礼品は、当初は想定外の仕組みでしたが、自治体が寄付を募るために地元の特産品などを送ることから広まり、今やふるさと納税の中心的な要素となっています。お米や肉、魚介類といった食品から、トイレットペーパー、ティッシュなどの日用品、さらには包丁や爪切りといった実用品まで、多種多様な品が提供されています。

ふるさと納税をするための流れ

ふるさと納税を行う際の一般的な流れは以下の通りです:

1. 寄付上限額の確認

ご自身の年収や家族構成によって、控除される寄付金額の上限が決まります。ふるさと納税ポータルサイトのシミュレーター等を利用して、おおよその上限額を把握しましょう。源泉徴収票の情報を活用すると、より正確な計算が可能です。

2. 自治体と返礼品の選択

ふるさと納税ポータルサイト(例: 楽天ふるさと納税、ふるさとチョイス、さとふる、ふるなびなど)を通じて、お好みの自治体や返礼品を選びます。

3. 寄付金の支払い

クレジットカードなどで寄付金を支払います。

4. 返礼品と書類の受領

後日、自治体から選んだ返礼品と寄付金受領証明書などが送付されます。

5. 税金控除の手続き

寄付した翌年の2月16日から3月15日までに確定申告を行うか、年間の寄付先が5自治体以内であればワンストップ特例制度を利用して簡易に手続きを完了させます。ワンストップ特例制度の申請期限は翌年1月10日必着です。

2025年10月、制度改定で「お得感」が大きく減少

ふるさと納税は、年々制度変更が行われており、特に近年は「改悪」と呼ばれるような厳格化が進んでいます。これは、寄付金に対する返礼品の過度な競争や、ポータルサイトの手数料などが本来の趣旨から逸脱していると総務省が判断しているためです。

そして、2025年10月1日からは、非常に大きな変更点があります。それは、ポータルサイト経由での「ポイント還元」が全面禁止となることです。

これまでのふるさと納税では、返礼品に加えて、楽天ポイントやふるなびコインなどのサイト独自のポイントが付与されることが多く、これが「現代の錬金術」とも呼ばれるほどのお得感を演出していました。例えば、10万円寄付できた方であれば、返礼品とは別に5,000ポイントから10,000ポイントがもらえていた計算になります。

総務省は、このポイント合戦が自治体間の競争を過熱させ、国民の税金が仲介業者への手数料として多額に消えている現状を問題視しています。

このポイント還元廃止により、ふるさと納税の「お得感」は間違いなく減少します。 これまで返礼品(寄付額の3割相当)に加えて5%~20%程度のポイントキャッシュバックが得られていたものが、2025年10月以降は、返礼品(寄付額の3割相当)のみになります。実質的なリターンが大幅に減少することを意味します。

駆け込み寄付のチャンスは「9月末まで」

このような制度変更の背景から、ポイント還元が適用される「2025年9月30日まで」に駆け込みで寄付を行うことが有効な対策となります。9月末までに寄付を済ませておけば、ポイントは有効期限内であれば利用可能です。人気の返礼品は品切れになる可能性もありますので、早めの行動が肝心です。

ふるさと納税2

知っておくべきその他の注意点

ふるさと納税は非常にお得な制度ですが、いくつか注意すべき点もございます。

一時所得課税のリスク

ふるさと納税の返礼品は「一時所得」と見なされる場合があります。競馬の払い戻し金や生命保険の一時金など、他の臨時収入と合算して年間50万円を超えると課税対象となります。

ただし、50万円の特別控除があり、その超過額のさらに1/2が課税対象となるため、税金がかかる場合でも、制度を利用しないより圧倒的に有利であることは変わりません。ご自身の寄付額が年間約166万円を超えるような高額寄付の場合は、一時所得の申告が必要になる可能性がありますがレアケースでしょう。

住民税控除漏れの確認

まれに、自治体側の手続きミスにより、住民税の控除が適切にされていないケースが報告されています。寄付をした翌年の6月頃に届く「住民税決定通知書」で、控除額が正しく反映されているかご確認ください。

上限を超えて寄付をしてしまうリスク

実質自己負担額2,000円でふるさと納税ができる金額は「寄付をする年の所得金額」と連動します。所得が大きい場合は、寄付できる上限額が大きく、所得が小さい場合は、寄付できる上限が小さいという意味です。

また、今回、9月末までに寄付をするとポイントがもらえるため有効なのですが「寄付をする年の所得金額」は12月末にならないと確定しないため、年末まで3ヶ月以上もある時点で、その年の所得金額を予想して寄付をする必要があります。

上限を超えて寄付をすると、お得感が減少するため、9月末まで時点で寄付する金額は、想定した寄付金上限額の8割程度など、ある程度の余裕分を持たせて寄付をすることがオススメとなります。

まとめ:今が最後の「お得」を手に入れる好機

ふるさと納税は、現役世代にとって数少ない、経済的なメリットを享受できる貴重な制度です。たとえ手続きに少し手間がかかるとしても、実質2,000円の負担でそれ以上の価値ある返礼品を受け取れるメリットは非常に大きく、利用しない手はありません。

ポイント還元が廃止される2025年10月以降も返礼品は継続されますが、「ポイント分のお得」は今が最後のチャンスです。この機会を逃さず、賢くふるさと納税をご活用ください。

石川県で「ふるさと納税」についてお悩みの方は、石川県金沢市にある当税理士法人にお声がけください。

この記事を書いた人

野村 篤史税理士法人のむら会計 代表
金沢で50年続いている会計事務所、税理士法人のむら会計を運営。
ITの知識・金融機関監査の経験を生かし「関わる人の納得いく決断と安心を誠実にサポートする」ことをミッションに活動している。

【主な保有資格】
公認会計士 登録番号26966 
税理士 登録番号125179 

【著書・掲載実績】
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