【能登半島地震】災害対策特別融資制度 金利ゼロ・保証料ゼロ・5年返済不要

石川県金沢市にある税理士法人のむら会計、公認会計士・税理士の野村です。
今回は、能登半島地震の影響を受けた人を対象とする特別な融資制度の解説をいたします。

この記事で分かることとして、まず、2月28日から制度がスタートした『令和6年能登半島地震災害対策特別融資保証制度』の概要が分かります。
また、罹災証明はないけど、間接的な被害を受けて、今回の融資制度を利用したい場合に、どんな条件が整えば制度が利用できるかも分かるような内容となっております。

制度の概要

まず制度の概要から説明します。
以下が制度のパンフレットです。

県伴走

制度の特徴

融資制度の通称は『県伴走(復興)』という名前です。そして、この制度の特徴は3つあります。

1つ目の特徴は、返済の据置期間が最大で5年間とれることです。
据置期間というのは、元金の返済がいらない期間です。
その期間が5年間とれるということは、借りても元金返済の負担が最大5年間はありません。

2つ目の特徴は、金利が5年間0円にできることです。
1つ目の特徴とあわせて考えると、5年間元金の返済が不要で、さらに利息の払いも不要であるため、返済負担が5年間はない、という話になります。

3つ目の特徴は保証料が無料です。
通常、借り入れしたら、保証協会に保証料を払う場合が多いのですが、その保証料も無料です。

ここまでをまとめると、3つの特徴が全て、事業者の立場でとても有利で借入負担が軽くなる話となっております。

対象者

続いて対象者ですが、対象者の1つ目は「事業設備に係る罹災証明書等をお持ちの方」が対象となります。
こちらについては、石川県の中でも能登方面で、地震の影響がとても大きかった方は罹災証明を受け取っているかと思います。
その場合は「罹災証明がある」という条件で今回の融資制度を使えます。

続いて、対象者の2つ目は「セーフティネット4号認定をお持ちの方」は今回の融資制度を受けることが可能です。
こちらのセーフティネット4号認定に関しては、また後ほど説明します。

融資限度額

融資の限度額は、1億円が限度となります。
大きな会社だと、1億円でも少なく感じるかもしれませんが、中小企業にとって限度額1億円は小さくない金額かと思います。

資金の使途

資金の使途、つまり、お金の使い道ですが、設備資金、運転資金、両方可能です。

設備資金とは「具体的に借入したお金の使い道が決まっている借入」を指します。
例えば製造業で機械装置を買いたいであったり、飲食店で新店舗を出店する場合の出店料などをまかなう目的の借入は設備資金にあたります。

一方で、運転資金とは「具体的に借入したお金の使い道が決まっておらず、日常の会社運営にお金をあてる借入」を指します。
この運転資金も対象となっているため、資金繰りが苦しい、というような事情であっても、今回の融資制度は使えることとなります。

ただし、借換利用は不可となっております。
例えば金利がある既存融資を借り換えて、今回の制度を利用するということはできないこととなっております。

融資期間

最後は融資期間です。
融資の期間としては、10年間までとることが可能です。
据置期間は最大5年間とれるため、5年間は元金の返済をしなくてもよく、その後5年間で返済する形がとれます。

例えば、1億円を10年返済という形だと、最初5年間は元金を一切返しません。
そして、金利も0ですので、負担が0の形で進んでいきます。

その後の10年のうちの後半の5年間で1億円を返すこととなります。
つまり後半5年間は1年あたり2千万を毎年返して、借りてから10年かけて1億円を返すことが可能です。

罹災証明がなく、間接被害で融資制度を使う方法

続いて、先ほど、後ほど解説すると記載した、罹災証明書がなくても今回の制度が使える、セーフティネット4号認定を受ける方法を解説します。

セーフティネット4号認定とは、「突発的災害の発生に起因して、売上高等が減少している中小企業者を支援するための措置」となっています。
つまり、売上が減少していることが要件となります。

具体的にどんな方が対象となるかは、次の①②のいずれも該当する中小企業者が対象となります。

①対象地域要件

まず1つ目の要件は、「指定を受けた地域で1年以上継続して事業活動をしている」必要があります。
指定を受けた地域は、具体的には石川県だと野々市市と河北町以外の全ての市町村で使うことができます。
そして、新潟、富山、福井の一部の地域でも使うことができます。
自社が対象地域か分からない場合は、金融機関に相談ください。

➁売上要件

続いて、2つ目の要件です。

・最近1ヶ月の売上高または販売数量が『実績として』前年同月比で20%以上落ちていていること。
・そして、それに加えて、その後2ヶ月を含む3ヶ月の売上高等が『見込みとして』前年同期間比20%以上下落していること。

以上が要件となっています。

なかなか具体的なイメージがつかないかと思いますので、数値で説明していきます。

まず、前提から説明します。

令和5年1月の実績売上が100万。
2月が80万。
3月が90万だったとします。

そして、地震があった令和6年1月の実績売上が80万。
そして令和6年2月の見込売上が50万。
令和6年3月の見込売上が70万という前提があったとします。

これらの数値を用いて、今回のセーフティネット4号認定の対象となるか判定できます。

判定として、まず最近1ヶ月の売上実績の前年同月比較を見ます。

1月の実績比較すると、今年が80万、そして去年が100万であるため、実績として20%下落しており、20%以上下落要件を満たします。

そして、その実績売上を含む残り2ヶ月を見込で入れて合計し、3ヶ月で前年同期比20%以上下落しているかを見ます。

つまり、令和5年1月売上実績:80万
令和5年2月実績:50万
令和5年3月実績:70万の合計である250万円と

令和6年1月売上実績:80万
令和6年2月売上見込み:50万
令和6年3月売上見込み:70万の合計である200万を比較すると、26%下落しているため、20%以上下落の要件も満たし、セーフティネット4号の適用が可能、という話になります。

ポイントとしては、最近1ヶ月の売上高はあくまで実績の数値を前年同月比較する必要があります。
そのため、実績の数値で、まず単月で20%以上下落しているかを判定しましょう。

その上で、続く2ヶ月の売上は、あくまで進行期は見込売上です。
売上の見込といっても、なかなか予測するのは難しいかと思います。
特に地震の影響があったら、前年よりも落ち込むのは通常かと。

そのため、残り2ヶ月の予想売上が前期比20%ほど下落することは、多くの場合で見込まれるかと思いますので、実質的には単月実績で1ヶ月売上が20%下落していれば、今回の制度を受けられる可能性がかなり高いのではないかと考えております。

まとめ

最後にまとめとなります。

まとめとして、今回の『能登半島地震災害対策特別融資保証』という制度は、とても優遇された制度です。
そのため、使える場合はぜひ使いましょう。
そして、直接被害を受けていない、罹災証明を受けていないような場合でも、セーフティネット4号認定を受けれれば、今回の制度が使えますので、積極的に制度を利用していきましょう。

今回は能登半島地震の影響を受けた事業者向けの特別な融資制度の解説をさせていただきました。
石川県で資金調達にお悩みの方は、石川県金沢市にある当税理士法人にお声がけください。

この記事を書いた人

野村 篤史税理士法人のむら会計 代表
金沢で50年続いている会計事務所、税理士法人のむら会計を運営。
ITの知識・金融機関監査の経験を生かし「関わる人の納得いく決断と安心を誠実にサポートする」ことをミッションに活動している。

【主な保有資格】
公認会計士 登録番号26966 
税理士 登録番号125179 

【著書・掲載実績】
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