最低賃金引き上げの波を乗り切る! 「業務改善助成金」と「キャリアアップ助成金」の賢い活用法

石川県金沢市にある税理士法人のむら会計、公認会計士・税理士の野村です。

秋が近づくにつれ、毎年ニュースを賑わせるのが「最低賃金の引き上げ」です。政府は「2030年代半ばまでに全国平均1500円」という目標を掲げており、厚生労働省は7/28に全国加重平均で55円(4.9%)増の目安を決めました。現在の石川県の最低賃金が1054円のため、10月頃には1100円を超える最低賃金になる見込みです。

最低賃金の引上げは、人件費の増加という負担につながります。一方で、このタイミングだからこそ活用できる助成金制度もあります。今回は、多くの中小企業で活用が期待できる「業務改善助成金」と「キャリアアップ助成金」をご紹介します。

1.設備投資と賃上げをセットで支援!「業務改善助成金」

まずおすすめしたいのが「業務改善助成金」です。事業場内の最も低い賃金を50円以上引き上げ、それに合わせて生産性向上に役立つ設備投資等を行った場合に、その費用の一部が助成される制度です。

■対象となる経費が幅広い

この助成金の魅力は、助成対象となる経費の幅広さです。以下のような経費が対象となります。

・POSレジシステムや自動釣銭機の導入
・顧客管理システム、会計・給与計算ソフトなどのITツール導入
・従業員の負担を軽減するリフト付き車両や特殊機材の購入
・飲食店などでの配膳ロボットや最新オーブンの導入
・店舗の改装工事や、業務効率化のための専門家コンサルティング費用

なお、令和8年度からは、軽自動車やハイエースなどの一般車両は対象外となりましたのでご注意ください。また、物価高騰等の影響で利益率が下がっている「特例事業者」に該当すれば、パソコンやタブレットなども対象となります。

■助成額は最大600万円

引き上げる賃金額(50円、70円、90円コースなど)や、引き上げる人数に応じて助成額が変わり、条件を満たせば最大で600万円を受給することが可能です。

業務改善助成金助成上限額

■【超重要】スケジュールの「落とし穴」

絶対に間違えてはいけないのが「賃上げと設備購入のタイミング」です。賃上げは、必ず「交付申請書を労働局に提出した後」から「最低賃金が改定される前日」までの間に実施しなければなりません。

10月1日に最低賃金が上がるとして、10月1日に賃上げを行った場合は「法律を守るために上げただけ」とみなされ、助成金は1円も出ません。必ず、最低賃金が上がる前に先行して自主的な賃上げを行う必要があります。また、設備投資の契約や購入も、申請書を提出して「交付決定」が下りた後に行わなければ対象外となります。

■活用のポイント

以下が業務改善助成金のポイントです。

業務改善ポイント

2.パート・アルバイトのベースアップに!「キャリアアップ助成金」

もう一つ活用しやすいのが「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)」です。こちらは、パートタイマーや有期雇用労働者(非正規社員)の基本給を、就業規則や賃金規程を改定して「3%以上」増額させた場合に受給できます。

■受給できる金額

中小企業の場合、基本給を3%以上増額すれば対象者1人あたり4万円、5%以上増額すれば1人あたり6万5000円が支給されます(1事業所あたり最大100名まで)。また、これまで昇給制度がなかった会社が新たに昇給制度を規定した場合、初回に限り20万円が加算される制度もあります。

キャリアアップ助成額

■最低賃金の波に乗って「毎年」受給可能

昨今のように最低賃金が5%近く、あるいはそれ以上引き上がる状況下では、最低賃金に合わせる形で時給をアップさせるだけでも、実はこの「3%以上」という要件をクリアしてしまう企業が少なくありません。しかも、要件を満たす対象者がいれば毎年受給が可能な点も非常に大きなメリットです。

■注意点

増額改定は、特定のスタッフだけでなく、原則として「有期雇用労働者等の全員」に対して行う必要があります(合理的な理由でグループ分けできる場合は、特定の部門や雇用形態のみを対象とすることも可能です)。また、雇用保険に加入している方が対象となり、親族等は除外されます。当然ながら、現在の雇用契約書や賃金台帳などが正しく整備されていることが大前提となります。

■活用のポイント

以下がキャリアアップ助成金のポイントです。

キャリアアップ助成金ポイント

3.まとめ:早めの事前準備が明暗を分けます

国は本気で賃上げを推進しており、これらの助成金は「従業員のために本気で賃金と生産性を上げようとする企業」を強力に支援してくれます。しかし、今回解説した通り、助成金は「事前の計画提出」と「正しいタイミングでの実施」が命です。現在の就業規則に最低賃金の条文を追加したり、雇用契約書を整備し直したりと、準備には1〜2ヶ月以上の時間がかかります。

助成金の申請代行や具体的な労務手続きについては社会保険労務士の独占業務となりますが、信頼できる提携社労士のご紹介など、皆様がスムーズに制度を活用できるようサポート体制を整えております。

今年の秋の最低賃金引き上げに向けて、ぜひ今から「うちの会社でも使えるのでは?」とご検討いただき、少しでも気になる点がございましたら、お早めにご相談ください。人件費増加のピンチを、助成金活用による生産性向上のチャンスに変えていきましょう。

賃上げに伴う助成金に興味がございましたら、石川県金沢市にある当税理士法人にご相談ください。

この記事を書いた人

野村 篤史税理士法人のむら会計 代表
金沢で60年以上続いている会計事務所、税理士法人のむら会計を運営。
ITの知識・金融機関監査の経験を生かし「関わる人の納得いく決断と安心を誠実にサポートする」ことをミッションに活動している。

【主な保有資格】
公認会計士 登録番号26966 
税理士 登録番号125179 

【著書・掲載実績・監修】
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