【国保逃れ規制】マイクロ法人はどうなる!?
石川県金沢市にある税理士法人のむら会計、公認会計士・税理士の野村です。
2026年1月に発覚して世間を騒がせた、某政党の地方議員による「国保逃れ」についてご存じでしょうか?
今回は、2026年3月に厚生労働省から緊急通知が出され、個人事業主やフリーランス、経営者の間で大きな話題となっている「国保逃れ」に対する規制強化と、ここ最近で設立が増えている「マイクロ法人」への影響について、解説いたします。
1. 「国保逃れ」問題の発端とそのカラクリ
個人事業主やフリーランスにとって、国民健康保険料(国保)の負担は非常に重いテーマです。
所得が上がれば上がるほど保険料も高くなり、令和7年度の限度額は年間109万円にも達します。
一方で、会社員などが加入する「社会保険(健康保険・厚生年金)」は、役員報酬などの給与額を低く設定すれば、保険料を最低限に抑えることが可能です。
この制度の差に目をつけ、高額な国保の支払いを免れるための「社会保険料削減サービス」が近年横行していました。
特に問題視されたのが、今年1月に発覚して世間を騒がせた、某政党の地方議員による一般社団法人を利用したスキームです。
具体的には、実態のない一般社団法人の理事(役員)に就任し、その法人に対して月額3.4万円〜5万円程度の「会費」を支払います。
そして、法人からは月額1.2万円程度の「役員報酬」を受け取り、社会保険の加入要件を満たすというものです。
理事としての業務は、月に2回簡単なアンケートに回答したり、勉強会に参加したりするだけでした。
これにより、年間109万円かかるはずだった国保料を逃れ、最低等級の社会保険に加入することで、保険料を年間数万円にまで激減させていたのです。
これは「社会保険制度へのタダ乗り」とも言える行為であり、大きな批判を浴びました。
2. 厚生労働省による緊急通知とNG基準
この事態を重く見た国が、ついに本格的な是正に乗り出しました。
2026年3月、厚生労働省は日本年金機構などに対し、法人の役員としての社会保険加入基準を明確化し、実態が伴わない場合は加入を認めない(違法とする)という通知を出しました。
今回の通知によって、以下のようなケースは社会保険の加入資格がないと明確に判断されることになります。
・会費が役員報酬を上回っている場合:
法人に支払う会費が、受け取る報酬より多い契約は認められません。
・業務実態が伴わない場合:
役員としての業務が「アンケートの回答」「勉強会への参加」「単なる活動報告」などに留まる場合は、経営に参画しているとは言えず、役員業務として認められません。
・決済権や指揮監督権がない場合:
業務の決済権があるか、または指揮監督する職員がいるかどうかも判断基準として挙げられています。
3. 資格取り消しによる恐ろしいペナルティ
今回の厚労省の規制により、上記のような不適切なスキームを利用している場合、非常に厳しいペナルティが科される可能性があります。
単に社会保険から抜けさせられるだけでなく、「過去に遡って社会保険の加入資格を喪失させられる」恐れがあります。
過去に遡って社会保険が取り消されるということは、その期間、実は国民健康保険に加入しなければならなかったという扱いになります。
実務上は過去2年分まで遡及されることが一般的であり、もし年間100万円の国保料がかかる人であれば、200万円を一括で納付するよう求められる可能性があります。
4. そもそも「マイクロ法人」とは何か?
ここで懸念されているのが、「マイクロ法人」を活用した手法についてです。
そもそも「マイクロ法人」という名称の会社形態が存在するわけではありません。
これは、個人事業主が自らのために設立する小規模な「1人法人(主に株式会社や合同会社)」を指す造語です。
事業拡大を目的としないため、設立費用や維持コストが安い合同会社が選ばれることが多くなっています。
マイクロ法人を活用する最大の目的は、社会保険料の削減です。
個人事業主としての活動はこれまで通り続けながら(廃業はしません)、それとは別に会社を設立します。
そして、そのマイクロ法人から月額5万円〜6万円といった最低等級の役員報酬を自分自身に支払います。
これにより、個人事業の利益にかかる高額な国民健康保険から脱退し、マイクロ法人を通じて最低水準の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できるため、合法的に社会保険料の負担を最小限に抑えることができるのです。
5. 「マイクロ法人」への影響はどうなる?
結論から申し上げますと、現在のところ、自分自身で設立して代表を務めるマイクロ法人が直ちに違法となり、今回の厚労省の規制の対象になるわけではありません。
なぜなら、マイクロ法人の社長は自ら経営に関与し、決裁権を持ち、業務を行う立場にあり、「実態のない名ばかり役員」とは性質が異なるためです。
しかし、決して安心できるわけではありません。
税務調査等において、法人としての事業実態がない(売上がゼロなど)場合や、個人事業の売上を不自然に法人に付け替えているだけだと判断された場合は、取引を否認され、個人事業の方で追徴課税を受けるリスクがあります。
また、月額5〜6万円といった低すぎる役員報酬で社会保険に加入していること自体が、今後の法改正などで規制のターゲットになる可能性も指摘されています。
6. 今後の対策とアドバイス
社会保険料の負担軽減は経営上の重要課題ですが、ルールを逸脱した方法には大きなリスクが伴います。
そのため、以下の対策をお勧めいたします。
1. 怪しい社保削減サービスには絶対に手を出さない:
現在、一般社団法人の理事になるようなサービスを利用している方は、速やかな脱退とマイクロ法人等への切り替えを検討しましょう。
2. マイクロ法人は「実態」を伴わせる:
マイクロ法人を活用する場合、個人事業とは明確にビジネスを分け、法人としての売上や活動実績(法人名義での証券口座を通じた投資信託の運用や配当受け取り、不動産管理などでも可)をしっかりと作ることが重要です。
3. 王道の節税対策を徹底する:
国民健康保険料は住民税の計算(=所得税の計算)がベースになっています。まずは青色申告の活用や、少額減価償却資産の特例による経費計上など、合法かつ確実な所得税・住民税の節税を徹底することが、結果として国保料の削減につながります。
税金や社会保険料は、「払うべきものは適正に払い、合法的に削減できるものはきっちり削減する」というスタンスが、最も事業を安全に成長させることができます。
石川県で「マイクロ法人」にお悩みの方は、石川県金沢市にある当税理士法人にお声がけください。
この記事を書いた人
- 税理士法人のむら会計 代表
-
金沢で60年以上続いている会計事務所、税理士法人のむら会計を運営。
ITの知識・金融機関監査の経験を生かし「関わる人の納得いく決断と安心を誠実にサポートする」ことをミッションに活動している。
【主な保有資格】
公認会計士 登録番号26966
税理士 登録番号125179
【著書・掲載実績・監修】
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