経営セーフティ共済(倒産防止共済) 節税になる?ならない?

こんにちは。石川県金沢市にある税理士法人のむら会計、公認会計士・税理士の野村です。

個人事業主としては1月~12月末で決算が締まるため
「節税」の話題も増える時期です。

今回は、個人事業主、法人ともに使えて
「節税」の話題が出たら必ず私が話す
経営セーフティ共済(倒産防止共済)について解説します。

経営セーフティ共済とは何か?

経営セーフティ共済とは
取引先が倒産(法的整理、取引停止処分、災害による不渡り等)したときに
中小企業が連鎖倒産に陥ることを防ぐための制度です。
国(経産省傘下の法人)が運営しています。

どんな方法で連鎖倒産を防ぐのか?

無担保・無保証で
掛金累計額の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れを可能にすることで
連鎖倒産を防ぎます。

タイミングも
取引先が倒産しその事業者との取引の確認が済み次第
すぐに借入ができます。

掛金は月額5000円から20万円まで自由に選べ
さらに一度決定した後に増減させることが可能で
その時々の事業の状況にあった掛金にすることができます。

掛金累計額の上限は800万円の制度となっています。

節税との関係は?

掛金が全額損金(≒経費)になる
という意味で節税効果が高い商品となります。

例えば12月決算で、11月時点で
利益が大きく出ていたとします。

そのような状況で
掛金を20万円として
さらに、1年分前払いできる仕組みがあるので
その仕組みを活用すると

20万円×12ヶ月=240万円

だけ、経費を増やすことが可能になります。
年末駆け込みで大きな額の節税を可能にする
という意味で効果的な商品です。

解約した時にはどうなる?

節税、という面では
「払った時の節税効果(=入り口)」の話と同等かそれ以上に
「解約した時にどうなるか(=出口)」を考えることが大事となります。

まず、解約自体はいつでもできます。
ただし、納付月数が12ヶ月未満の場合はお金が戻ってきません。
戻り率は以下の通りです。

民間の節税用保険について
近年は規制がかかり
「払った時に全額損金、解約時に80%も戻る」
という商品はありません。

そして、40ヶ月で100%も戻りがある商品も当然ないため
節税、という観点で
すごく使い勝手のよい制度となっています。

なお、重要な話として
「払った時は経費になるが、解約した時は収益」
になります。

よって、どういうタイミングで使うかを
検討する必要があります。

本当に節税になるの?

「払った時に経費になって節税できても
解約した時に収益になって余計に税金を払うなら
結局変わらないのでは?」という疑問が出るかと。

実際にネットで
「経営セーフティ共済 節税」と検索しても
「節税になる」という記事と
「節税にならない」という記事が入り乱れている状態です。

ここで事例を単純化して

・毎年600万円利益が出る法人。
・年間200万円4年間掛金を払い、5年目に解約して800万円払戻。
・税率は800万円までは25%、800万超は35%かかる法人。

という条件で、共済に加入しない場合、加入した場合を見ていきます。

加入しない場合の税金は750万円です。

共済に加入した場合は、税金が810万円に。。。

理由は、加入した場合の5年目の税引前利益が1,400万円で
800万円を超えて
高い税率がかかってしまったからです。

では、どんな時に節税になるかが次の話です。

共済加入が有効なケース

結論として
「共済に加入することで、高い税率を回避できる」というケースだと
加入が節税になります。

先ほどの事例の利益の想定を変えて

・1年目~4年目は1000万の利益が出る。X年目は利益がゼロ。
・利益がゼロのX年目に解約して800万円払戻

というケースだと

加入しない場合の税金は1080万円です。

加入した場合は1000万円の税金で
加入しない場合と比べて80万円節税になります。

まとめ

「経営セーフティ共済に入ると必ず節税になる」
というのは正しくなく
「必ず節税にならない」
というのも正解ではありません。

「高い税率がかかっている時に加入し
払戻しても低い税率となる時期を見計らって
解約すると節税になる」
というのが正しい答えです。

制度自体はすごく有利な制度ですので
正しい知識を身につけ
賢く節税していきましょう。

また、石川県で、経営セーフティ共済について興味を持たれた方は、石川県金沢市にある当税理士法人にお声がけください。

この記事を書いた人

野村 篤史税理士法人のむら会計 代表
金沢で50年続いている会計事務所、税理士法人のむら会計を運営。
ITの知識・金融機関監査の経験を生かし「関わる人の納得いく決断と安心を誠実にサポートする」ことをミッションに活動している。

【主な保有資格】
公認会計士 登録番号26966 
税理士 登録番号125179 

【著書・掲載実績】
図解でざっくり会計シリーズ2 退職給付会計の仕組み(中央経済社)
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