これだけは知っておきたい、平成31年税制改正

こんにちは。石川県金沢市にある税理士法人のむら会計、公認会計士・税理士の野村です。

今回は、昨年12月に公表された
H31年税制改正大綱について取り上げます。

結論として大きな改正はありません。

前回のニュースレターで取り上げた
今年10月の消費税率引き上げに伴う
景気低迷に備えた税制改正の割合が大きいです。

一方で、目立たないのですが
改正によって使い勝手が悪くなる制度もありますので
まずはそこから取り上げていきます。

個人向け:教育資金の一括贈与の改定 19年4月~(重要度:大)

本来、教育資金は必要な都度、贈与すれば
教育資金という性質上
贈与税はかかりません。

大学の学費など両親から出してもらう方が多いですが
贈与税はかかっていません。

ただし、例えば生まれてすぐの赤ちゃんに
「この子は将来医者にするから
必要な学費3000万をあげよう」
とまとめて贈与すると
必要な都度、ということにあてはまらず
贈与税がかかってしまいます。

「教育資金の一括贈与」という制度ですが

・祖父母などの直系尊属から
・30歳未満の孫に
・金融機関等で手続きして教育資金を贈与する場合
・一括であっても1,500万円までは贈与税がかからない

という制度になっています。
原則の例外、という位置づけです。

制度を利用すれば
まとめて贈与しても贈与時点で贈与税がかからず
祖父母が亡くなったときに相続財産から除かれ
相続税の節税になる、というメリットがありました。

そのメリットが一部なくなります。

改正後は

・贈与が相続開始前3年以内の場合
一括贈与した教育資金の「残高」が相続税の対象
(孫が23歳未満、学校に在学等の場合は除く)

になります。

贈与後3年以内に祖父母が死亡しなければ
改正は関係ないのですが
通常、祖父母は高齢であることが多いため
先のことは分かりません。

この制度、19年4月から使い勝手が悪くなるので
もし検討されるようでしたら
19年3月31日までに実行することをオススメします。

個人向け:住宅ローン減税の延長 19年10月~ 重要度:中

マイホームについて消費税増税前に駆け込みで建てる
という需要が必ず生まれます。

その後の反動減を緩和するため

・消費税が10%である住宅の取得等をして
19年10月1日~20年12月末までの間にその住宅に居住した場合

・次のいずれか少ない金額を
現行の住宅ローン減税の控除期間10年が終了後
11年目~13年目までの各年において住宅ローン控除できる

という制度ができます。

11年目~13年目までに毎年控除できる額は

① 住宅ローンの年末残高×1%
② 住宅取得の対価×2%÷3

のいずれか少ない金額とされています。

数式を見ても理解しづらいので噛み砕くと
「8%から10%に上がった消費税2%分を
住宅ローン減税でカバーするから
無理に駆け込みで買わないでね」
という制度になります。

今、住宅メーカーは
「増税前にマイホームを建てないと損ですよ」と
しきりに営業しています。

しかし、この制度を使うと
損をしないケースもあるので
過剰反応して判断を焦らなくても大丈夫です。

ただ、個人の状況によっては
「引き上げられた消費税2%分の減税を受けられないケースもある」ため
「住宅メーカーから増税を理由に早い判断を迫られているが
本当はもっと時間をかけて検討したい」という場合はご相談ください。

法人向け:中小企業向け優遇税制の新設、延長 重要度:小

新設と書きましたが
小粒なもので

・防災、減災設備の投資について特別償却が導入される。

というものが新しいものです。
そこまで適用できるケースは多くないかと。

延長としては

・年800万円以下の所得(≒利益)に対する低い法人税率が2年延長

・中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制、商業サービス業活性化税制の2年延長

と頻繁に使っていた税制はこれからも使えます。
過去から使っている税制が使える
という観点では、あまりインパクトは大きくないかと。

まとめ

今年の税制改正は大きな改正は少ないです。
ただし、今回は省略しましたが
「個人事業主の事業承継税制」など
もしかしたら使えるかも?と思えるような税制も存在はしています。

また、情報収集しながら
知ってもらうべき、と考えたタイミングで
ご紹介できればと考えています。

また、石川県で、今年の税制改正に興味を持たれた方は、石川県金沢市にある当税理士法人にお声がけください。

この記事を書いた人

野村 篤史税理士法人のむら会計 代表
金沢で50年続いている会計事務所、税理士法人のむら会計を運営。
ITの知識・金融機関監査の経験を生かし「関わる人の納得いく決断と安心を誠実にサポートする」ことをミッションに活動している。

【主な保有資格】
公認会計士 登録番号26966 
税理士 登録番号125179 

【著書・掲載実績】
図解でざっくり会計シリーズ2 退職給付会計の仕組み(中央経済社)
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