起業時の戦略。ターゲットは広い方がよい?狭い方がよい?

こんにちは。石川県金沢市にある税理士法人のむら会計、公認会計士・税理士の野村です。

「スポーツジムを経営したい」「webサイト制作会社を作りたい」「花屋を開きたい」など
起業にあたり、行うビジネスは自分の得意分野をもとに一番最初に決まるでしょう。
一方で、「誰」を対象にビジネスをするか、イメージがついている方は少ないです。

起業のターゲット

そもそも、「誰」とターゲットを絞らず、例えばスポーツジムでしたら
「老若男女問わず、すべての人に来てくれるジムにしたい」と考え起業した方がいいのか
それとも「結婚前の自分磨きにお金を使える20代から30代の女性が来やすいジム」というように
ターゲットを絞って起業した方がいいのか
どちらの考え方がよいのかまとめました。

弱者の戦略|ランチェスターの法則

少し話が飛びますが、第一次大戦から導き出された法則に
「ランチェスターの法則」というものがあります。

ランチェスター

法則には次の2つの考え方が記載されています。

<一騎打ちの法則>

一騎打ちの法則では
一対一で槍を持って決闘のような単純な戦闘状況を想定しています。

東軍が10名おり、西軍が6名いる。
全員が槍を持って一対一で戦った場合にどうなるでしょう。

武器・性能が同じ場合は、東軍・西軍ともに6名の犠牲がでます。
結果として東軍は4人生き残り、西軍は全滅。
攻撃力に換算すると

東軍:西軍=10:6

ざっくり言うとこんな法則です。

<集団戦の法則>

多数vs多数で、銃のように射程が長い武器を持った集団戦の戦いを想定しています。

さきほどと同じ想定で、東軍10名、西軍6名。
この時、集団戦で射程が長いという前提のため
東軍1人の被弾率は10名いるため1/10。
また、攻撃する西軍側が6名いるため1/10×6=6/10になります。

一方で、西軍の1人の被弾率は6名いるため、1/6。
攻撃する側の東軍は10名いるため、1/6×10=10/6になります。

損害率の比率を出すと

東軍:西軍=6/10 : 10/6

見やすい比率に直すと

東軍:西軍=36:100

になります。また、攻撃力は損害率の裏返しと考え

東軍:西軍=100:36

と人数を2乗したものになります。

1騎打ちの場合の攻撃力が10:6で、数値を合わすと

東軍:西軍=100:60

ですので、人数が少ない側は1騎打ちに持ち込むのが有利といえます。

長い説明になりましたが、この法則から導き出されるものは

「弱者は射程距離が短い武器で、1対1で勝負できる環境を作り、各個撃破」ということです。

起業における弱者の戦略

起業の話に戻すと、人・金・モノのすべての資源が潤沢でない起業家は
間違いなく弱者の戦略を採用するべきです。

起業 戦略

具体的には起業家は以下の戦略を採用するのがよいでしょう。

<射程の短い武器=商品を絞って提供>

「何でもやります!」という売り方ではなく
「◯◯専用の商品です!」と商品を絞ります。

何でもやると、先発のライバル会社の方が資源が豊富なため集団戦になり太刀打ちできません。
トヨタのようにフルラインですべての車種を提供するより
スズキを目指し、軽自動車だけに特化して、それだけに力を注ぎましょう。

<1対1で勝負できる環境=直接販売>

起業直後に売上を伸ばそうと大量のお金を投じ
無理してCMや、高い広告を打つのは有効ではありません。
それを見た、より体力のあるライバル会社に同じことをされると簡単に負けます。

間接的に広範囲に売り出していくよりも
起業時だからできる、能力の高い社長が直接商品のよさを売り込んでいく戦略が有効です。
「広く薄くではなく、狭く濃く」売り込みましょう。

<各個撃破=サービス提供エリアを絞る>

インターネットが普及した世の中では
つい「全国どこにでも販売します!」と売り出したくなりますが
あえて「ここでしか買えないものを提供します。」と絞るのが有効な戦略です。

エリアを広げすぎるとDMを打つにしても費用が多額になりますし
宣伝を見た見込み客としても
遠くの商品を買いたいというニーズはよっぽどのブランド価値がないと難しいです。
起業直後にブランド価値がある方が珍しいでしょう。

それよりもサービス提供エリアを絞り
集中的に資源を投入した方が有効です。

まとめ|起業時に採用すべき戦略

(失敗しやすい戦略)

老若男女どんな人にも、どこへでもサービスを提供する。

(有効な戦略)

ターゲットを絞るのは怖いが、自分の価値を提供する先を絞り込んでサービス提供する。

 

私が属する税理士業界でも「パン屋さん」のみを対象に商売をしている方がいました。。。
ターゲットを絞ることはどの業種でも大事ですね。

 

この記事を書いた人

野村 篤史税理士法人のむら会計 代表
金沢で50年続いている会計事務所、税理士法人のむら会計を運営。
ITの知識・金融機関監査の経験を生かし「関わる人の納得いく決断と安心を誠実にサポートする」ことをミッションに活動している。

【主な保有資格】
公認会計士 登録番号26966 
税理士 登録番号125179 

【著書・掲載実績】
図解でざっくり会計シリーズ2 退職給付会計の仕組み(中央経済社)
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